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はじめに
「いかにプレイヤーに気持ちよくゲームを遊んでもらうか」
この一点を、20年以上にわたり週刊ファミ通のコラムで書き続けてきた男がいます。
その男の名は桜井政博。
『星のカービィ』『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズの生みの親であり、世界屈指のゲームデザイナーとして知られるその人です。
彼が週刊ファミ通で連載してきたコラム「ゲームについて思うこと」は、2005年の第1巻から始まり、現在まで計9冊以上が書籍化されてきました。
その中でも今回取り上げるのが、『桜井政博のゲームについて思うことDX』。
シリーズ第3弾にあたるこの一冊は、スマブラXの開発が佳境を迎えていた時期に書かれたコラムを軸に、GDCの講演再現や「桜井さんへの100の質問」など単行本独自の企画も盛り込んだ、シリーズの中でも特に読み応えのある一冊です。
なぜ今、2008年に出た本を紹介するのか。
それは、このコラム集に書かれた「ゲームを面白くするための思考」が、2020年代のゲーム業界においても驚くほど正確に刺さり続けているからです。
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- 1. 桜井政博とはどんな人間か
- 2. このコラムが他のゲーム本と根本的に違う理由
- 3. 『DX』に収録された時期の桜井政博——スマブラX開発の渦中で
- 4. 読みどころ:このシリーズで繰り返し語られる思考の核心
- 5. ゲームファン・ゲーム開発者、どちらにとっての本か?
- まとめ:桜井政博のコラムが「バイブル」と呼ばれる理由
1. 桜井政博とはどんな人間か
まず、桜井政博という人物について整理しておきます。
1970年8月3日生まれ。
HAL研究所時代に『星のカービィ』(1992年)を手がけ、その後スマブラシリーズのディレクターを一貫して務めてきた人物です。
現在は有限会社ソラの代表として独立したゲームディレクターとして活動しています。
彼のゲーム制作への姿勢は、
一言で言えば「プレイヤーの立場に徹底的に立ち続けること」です。
数百人規模のチームを率いながら、自身も膨大な量のゲームを常にプレイし続ける。
「プレイヤー目線を忘れたゲームクリエイターのゲームは面白くなくなる」という信念のもと、多忙な開発の合間にあらゆるゲームを研究し続けてきました。
その研究と実践の記録が、このコラムシリーズです。
また近年ではYouTubeチャンネル「桜井政博のゲームを作るには」でも開発の知見を発信しており、そこから入ってコラム本を読み始める読者が急増しています。
2. このコラムが他のゲーム本と根本的に違う理由
ゲーム開発者が書いた本は数多くあります。
しかし桜井政博のコラム集が「ゲームファンのバイブル」と呼ばれる理由は、「現役の最前線クリエイターが、リアルタイムで書き続けた記録である」という点にあります。
多くのゲーム本は、キャリアの終盤や節目に書かれた「回顧録」です。
しかし桜井氏のコラムは、スマブラXを作りながら、スマブラ for Wii Uを作りながら、スマブラSPECIALを作りながらその渦中に書かれたリアルタイムの思考記録です。
「今この瞬間、自分は何を考えながらゲームを作っているか」という生の声が20年分積み上がっている。
これは他のゲーム本では代替できません。
さらに、テーマの幅が広い。
- ゲームを面白くするための設計思想
- ユーザーからの要望との向き合い方
- 大規模チームのディレクション方法
- 遊んだゲームの正直な感想と分析
- ゲーム業界の現状への率直な意見
単なる開発秘話集でも、業界論でもない。
「ゲームというものについて深く考え続けてきた人間の思考」がジャンルを横断して詰まっています。
3. 『DX』に収録された時期:スマブラX開発の渦中で
『DX』(第3巻)が収録しているのは、連載第101回から第188回です。
この時期、桜井氏は『大乱闘スマッシュブラザーズX(スマブラX)』の開発の真っ最中でした。
本書の最大の読みどころの一つが、巻頭カラーに収録されたGDC(ゲーム開発者向け講演会)の紙上再現です。
2008年2月にアメリカ・サンフランシスコで行われた世界最大のゲーム開発者会議GDCにて、桜井氏はスマブラXの開発について講演を行いました。
この内容が国内では初めてこの単行本で披露されたのです。
スマブラという「全員が参加できるゲーム」をどう設計するか。
初心者とベテランが同じ場で楽しめる難易度設計の哲学。
膨大なキャラクターを「対等」に感じさせるバランス調整の考え方。
これらが桜井氏の言葉で直接語られています。
さらに単行本独自企画として収録された「桜井さんへの100の質問」は、普段のコラムでは見えにくいパーソナルな部分として愛猫への愛着、ゲーム以外の趣味、仕事観が垣間見える、ファンにとって必見のコンテンツになっています。
4. 読みどころ:このシリーズで語られる思考の核心
シリーズ全体を通して、桜井氏が繰り返し言及するテーマがいくつかあります。
「プレイヤーを狭めない」設計
カービィのコピー能力に象徴されるように、桜井氏は「一つの正解を作らない」ことに徹底的にこだわります。
上手いプレイヤーも下手なプレイヤーも、それぞれの楽しみ方ができるゲームこそが「多くの人に愛されるゲーム」という考え方です。
スマブラが老若男女に親しまれる理由の根本がここにあります。
「特徴に意味が加わると面白くなる」
ゲームの要素に「ただ存在する」以上の意味を与えること。
これが桜井氏の設計哲学の核心の一つです。
見た目だけのキャラクターではなく、操作感・技の性質・ストーリーとの連動まで含めて「意味のある存在」にする。
この発想はDXの時期のコラムでも随所に顔を出します。
「意図は目に見えないもの」
これは後のシリーズでも語られる命題ですが、「ゲームクリエイターの意図がプレイヤーに伝わらない」という本質的な問題への向き合い方です。
どれだけ丁寧に設計しても、意図通りに受け取られないこともある。
それをどう受け止め、次の設計に活かすか。
桜井氏の謙虚さと誠実さが滲み出るテーマです。
ゲームへの研究心
桜井氏が書く「自分が遊んだゲームの感想」は、単なる評論ではありません。
「このゲームのこのシステムは、なぜ気持ちいいのか」「このゲームはここが惜しかった、なぜか」という分析の視点が常に入っています。
これが読者にとって、ゲームを深く見る目を養う訓練にもなっています。
5. ゲームファン・ゲーム開発者、どちらにとっての本か?
一つ断言できることがあります。
このシリーズは、ゲームを「遊ぶ人」にも「作る人」にも読む価値があります。
ゲーム開発者・ゲームデザインを学ぶ人にとっては、日本最高峰のゲームディレクターがどのような思考でゲームを設計するかをリアルタイムの言葉で追える貴重な資料です。
「ゲームバランス観」「ディレクター育成論」「大規模チームのマネジメント」といった実践的なテーマも多く含まれています。
ゲームを楽しむ一般プレイヤーにとっては、「自分が面白いと感じている理由」を言語化してもらえる体験があります。
ゲームを遊んでいて「なんとなく気持ちいい」と感じていた瞬間の背景に、これほど緻密な設計思想があったのかという驚きは、ゲームをより深く楽しむための視点を与えてくれます。
文章もやさしく、「ゲームに詳しくない人も楽しめるような用語解説」も収録されているため、読み始めるのに専門知識は不要です。
まとめ:桜井政博のコラムが「バイブル」と呼ばれる理由
このコラムシリーズが多くのゲームファン・クリエイターに「バイブル」と呼ばれる理由は、「現役最前線のクリエイターが、20年間リアルタイムで書き続けた思考の記録」という唯一無二の価値にあります。
桜井政博は今もゲームを作り続け、YouTubeで知見を発信し続けています。DXをはじめとするコラム本は、その思考の原点であり、積み上げの記録です。
ゲームを深く好きな人間が、ゲームを深く考え続けた人間の記録を読む——それ以上の読書体験はそうそうありません。
興味を持たれた方は是非、本書を手に取ってみてください。
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